日本は潜在的な生産性を生かしきれていない!ことを痛感させられる本
『新・所得倍増論』を読んだ。
この本を要約すると
① 日本の生産性の潜在能力は高いのだがそれを活かせていない。
② GDPは高い(あるいは高かった)がそれは人口が多かったから。
③ GDPは人口 × 生産性。人口が少なくなったら生産性を上げるべし。
④ 潜在的生産性は高いのだからそれが生かせれば所得倍増、GDPは1.5倍に。
ということになる。
バブル経済が弾けて「失われた20年」が過ぎた。
それでもGDPランキング世界ランキング第3位、製造業生産顎第3位、輸出額ランキング第4位と、日本はなかなか頑張っているように見える。
でも、別のデータを用いいて別の角度から見直すと日本はランキング下位の国である。
ということを『新・所得倍増論』の著者デービッド・アントキンソン氏は様々なデータに基づき実証的に解き明かしてくれる。
人口というボーナスを失った日本
デービッド・アントキンソン氏の『新・所得倍増論』で核となるのが“人口ボーナス”という現象だ。
日本の「人口」は戦後すさまじい勢いで増加していきます。(略)世界の長寿大国になったことも追い風になります。
戦後の日本の人口はアメリカの人口の51.7%。1988年まではだいたい50%以上をキープしています。(略)
1977年まで、アメリカ経済と日本経済の差が縮まっていったのは、人口ボーナスと生産性の相対的な改善によるものでした。
GDP=人口 × 生産性なので生産性が向上しなくても人口が増えればGDPは高くなるということだ。
この本を読んで初めて日本は人口の多い国だったことを知った。
ちなみに現在、日本は世界10位の人口だ。
「世界経済のネタ帳」というページで調べてみた。
9位の広大なロシアが1億4千万人。
10位の日本は小さな島国に1億2千万人がひしめいている。
しかし、2016年、日本は出生数が初の1000万人割れになった。
(出展:日本経済新聞 http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS21H51_R21C16A2MM8000/)
少子化・高齢化社会になった日本ではもう人口ボーナスは期待できないのだ。
これからの日本の課題:生産性をいかに高められるか
GDP=人口 × 生産性だから、今後は生産性を高める工夫をしなければならない。
バブル後、「失われた20年間」に生産性を高める努力をしなければなからなったのにそれをしてこなかった、というのがデービッド・アントキンソン氏の主張だ。
『新・所得倍増論』を読んでいるといかに日本が(つまり、僕たちが)何もやってこなかったかが理解できる。
データに基づき、難しい話をとても分かりやすく説明してくれるので耳の痛い話だけど痛快でもあります。要は、
日本を礼賛しても、経済は復活しない(165p)
し、
データサイエンスが足りないから抽象的な議論に(167P)
なっている。それではダメだということだ。
生産性が高くない日本。これはピンチかチャンスか
GDPという指標で経済力を語ってきたのに『新・所得倍増論』は「人口」という新しい座標軸で経済を見直し対策として「生産性」の向上を提案している。
この本を読んで似ているなと思ったのがエマニュエル・トッドの『グローバリズム以後 アメリカ帝国の失墜と日本の運命』 (朝日新書)だ。
『グローバリズム以降』(エマニュエル・トッド)は、もう、始まっているという記事で書いたがトッドは識字率や家族制度、出生率といったデータを基にEU離脱やアメリカ大統領選を予想しているのだ。
グローバリズム以後 アメリカ帝国の失墜と日本の運命 (朝日新書)
エマニュエル・トッドもデービッド・アトキンソンも「人」というビッグデータを用いることで、これまでの(常識と思っていた)分析手法では読み取れなくなった世界動向や経済を読み解いていく。
この新しい視点で日本を見直すと日本の生産性は人口が増加していた時代と変わらず低いということになる。
しかし、デービッド・アトキンソンは日本人の潜在性は高いのでそれを発揮すれば所得倍増、GDP1.5倍も可能だという。
日本の生産性の低さはピンチに見えるが潜在能力は高いのでこれを機会に生産性を発揮出来る環境作りを行えば日本は復活するというストーリーだ。
女性の労働環境の見直し、IT化の推進など、生産性向上のために着手すべき具体例を『新・所得倍増論』は示してくれている。
まとめ
国の経済力を図る基準としてGDPは絶対だと思っていた。
なぜかというと子供の頃からGDPで語られてきたし、学校でもテレビでもGDPだったからだ。
しかし、それらを別の新しい視点で見直すと全く違う結果や形が見えてくることを『デービッド・アトキンソン 新・所得倍増論』は教えてくれる。
国のレベルだけでなく、僕たち個人のレベルでも「生産性」の向上は重要なテーマだ。
2017年以降、「生産性」は重要なキーワードとなるだろう。
日々の生活も「生産性」を高めていくことが大切だ。
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